nombirato!: Teacher's eye

2016年09月03日

本当のプライド


かれこれ17年くらい教えに行ってる高校の吹奏楽部での話。考えたら今やらせてもらっている仕事の中で、一番長く続いている仕事になった。

やってることは、ビシバシ鍛えるという事とは無縁で、ほとんどの場合お悩み相談という感じ。これも、その学校の生徒達の意識が高いから成り立つのであって、他の学校でも同じレッスンで効果が上がるとは言えない。

とあるレッスンの日、普通なら課題曲のココが吹けないとか、ハイトーンが出ないとか、そんな話をして来る生徒達の中で、ちょっと相談があるのですが、、と言う子がいた。

とても上手な子で、僕をご存知な方はわかると思うけど、僕から音大受けないの?とか、絶対言わないのに、僕から珍しく「音大受ける気は無いの?」と思わず言ったくらい吹けるプレーヤーです。その子がA編成からB編成に移ったと言ってたのでオヤ?と思ってました。

詳しくは知らないけど、顧問の先生と少しすれ違ってしまったというか、きつく何かを注意された時に、そこで意地を張ったのか、自分からB編成に移りますと、(本心でなくつい)言ってしまったのを、後悔していたのが、言葉の端々から滲み出ていた。その後周りの生徒達の中ではB編成で演奏するのが楽しそうに振る舞っていたそうな。

プライドがそうさせるのか、僕にはその気持ちがホント痛いほどわかった。でもそこでどうしたら良いか、僕的には答えは1つしかなくて、「自分の気持ちに正直になるしかないんじゃない?」「先生に分かってもらうまで正直に謝るしかないよ。」と言うことを本人に伝えてその日は学校をあとにした。



後日、無事A編成に戻ったと言う話を聞いた。顧問の先生に謝れば良いと、言葉で言うのは簡単だけど、それを行動に移すのは、大変な決心が要ったのだと思う。顧問の先生にも話を聞いたけど、かなり号泣しながらの謝罪だったようで、それまでの、その子のキャラクターからすると想像も出来ないような出来事だったそうですよ。しかし本当に良く言えたね。素晴らしい。

当事者本人にすると「こんな事書くな!」って思うかも知れないけど、この前会った時は本当にいい顔、いい目をしてました。それがとても嬉しかったので当欄のネタにさせてもらいました。その子は多分これからどんな所に行ってもしっかり生きていけるなと、少々大袈裟だけど感じました。これからまだまだコンクールシーズン続くので、みんなで一丸となって頑張って欲しいなと思ってます。


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2016年08月28日

とあるレッスンにて


受講生の子は本当に上手だったんだけど、その上手くなりたいというベクトルの向かう先が、僕がフォロー出来る範囲外だと思われ、実に惜しいというか、非常に難しいレッスンとなった。

楽器が上手いという事と、プロでしっかりやっていくと言うのは「=」なようで、実はそうではない。プロはコンスタントに調子を維持しなければいけないし、またあらゆる音楽のスタイルに対応できるように準備し、得意でも不得意でも、依頼主のご注文とあらばなんとかカタチにしなければいけないのだ(依頼主は当然指揮者の場合もある)。常設オケの団員としてではなく、フリーランスとして受ける仕事は、ほとんどの場合毎回違うメンバーとセクションを組み、素晴らしいハーモニーを奏でなければならない。

そんな、様々な状況に対処するためには、それ相当の基礎力、技術力とか、知識、音楽的センス、アンサンブル力、コミュニケーション力などが必要なわけで、身に付けるのは本当に大変。大学に入ってからでも勉強は可能だけど、早くから勉強する方が良いに決まっているし、自ら気づいて欲しいもの。

ある一方向のスタイルしか知らない(というか、ほとんど自己流に思えた)、エチュードはほとんど吹いた事がないと言うプレーヤーが、大人になってから、果たしてプロとしてあらゆる場面で成功する事ができるのか。

裏を返せば、演奏能力のみが突出しているので、キチンと早い時期から基礎を学ぶことをやっていれば、世界をアッと言わせるような、そんなプレーヤーに育つ可能性大なのではないか。いや、今からでも本人が気づけば良いのではないか、とも思うし。

そう言えば過去に自分の後輩にもそんなヤツがいたなぁ。。。

結局のところ本人がどうしたいのか、どんなプレーヤーになりたいのかも明確でないし、先生としてはどうフォローしたら良いのかワカラナイと言う、ただのボヤキでした。


posted by 古賀慎治 at 02:24| Comment(0) | TrackBack(0) | Teacher's eye | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月20日

ソロと伴奏とアンサンブル力(一部修正済み)


(一部不正確な記述があったので訂正しました)

またまたおよそひと月振りの更新でございます。ご無沙汰しておりました。気ままな更新ですが、これからも細々と続けて行くつもりなのでひとつよろしくお願いします。。。

昨日は学内の第1ホールを借りて前期の実技試験前のおさらい会でした。トロンボーン専攻の1〜3年の7人と、テューバ専攻の2人で計9人が演奏。1年生は初の試験なので若干硬さを感じました。トロンボーン専攻の3年生はご存知?の通り藝大始まって以来初の女子3人組なのですが、今回はちょっと大きな変化がありました。

これまでの試験では、3人のうち2人は入学前から伴奏してもらっている、いわば彼女たち専任の先生が伴奏されていて、あとの1人は藝大の管打楽器科の伴奏助手の先生の伴奏でした。それぞれの伴奏の先生方はトロンボーンのレパートリーに精通されたプロとして活躍されている方々なので、学生からすると、本当に安心して本番に臨めるのだと思う。

今回そのうち2人が、かねてから僕が「ほかの人にも伴奏してもらったら〜」と言う意見に応える感じで初めての伴奏者を伴って来た。1人は学生で、もう1人は卒業したてのプロとしての活動を始めたばかりのピアニスト。例えば学生に伴奏してもらうメリットは伴奏合わせを回数多く重ねて、「アンサンブル力を育むこと」につきる。

今回はヒンデミットとマルタンと言う、ピアニストにとっても簡単ではない曲なので、正直仕上がりが心配だったけど、何とか頑張って結果を出して来てくれたので、その調子で試験に臨んで欲しいものだ。


そもそも去年の管打コンクールの時にも考えた事なんだけど、伴奏ピアニストの世界では日本を代表するような方々に日常的に伴奏してもらえる環境、そして学生に伴奏を頼むと言えば同じ学校のピアノ科学生に伴奏してもらえると言うのは、相当恵まれているのではないか。

学生が伴奏の専門家から学ぶ事は、計り知れないほど貴重なものだ。伴奏の先生が、プロの演奏家として演奏して来られた経験のフィードバックが当然あるだろうし。また、僕や石川先生のレッスンでカバーできない領域のことを丁寧にフォローしていただいているのを、常日頃から感じていて本当に感謝の気持ちしかない。

しかし、そこで心配になって来るのは、果たして学生たちは、このまま卒業して社会に出て大丈夫なのだろうかと。

学生に伴奏してもらう事によって得られる事。ピアニストとは対等な立場で、回数多く練習を積む事によって、共に勉強しながら作品に対する理解を深め、アンサンブル力、構成力、あとは練習の効果的な組み立て方、効率的な進め方などを勉強できる貴重な機会。対等な立場と言っても、通常はピアノ科と金管楽器では音楽的なスキルはそれなりの隔たりがあるもの。そこをしっかり耐えて、対等でありたいと頑張るのも大事な経験だと思う。

大切なのは学生のうちにバランス良く経験して、演奏家として大切な基礎力、アンサンブル力を高めて欲しいと言う事。伴奏の専門家にしか弾いてもらった事がないと言う状態のまま卒業して、初対面のピアニストと演奏するチャンスがあったらどうするのでしょうか。これからも折を見て、学生達には如何に恵まれた環境にいるかと言うこと、それをもっと活用すること、専門家と学生とどちらの伴奏者とも、対等に音楽を創っていけるような力をつけて欲しいと、言い続けたいと思います。
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posted by 古賀慎治 at 01:10| Comment(0) | TrackBack(0) | Teacher's eye | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月21日

春の呼ぶ声を聞く

先週、6/17に新大久保の楽器店DACさんの地下、Space Doで藝大の3年在学中の福澤優加さんのリサイタルがあって、一曲デュエットを演奏させてもらいました。マルタン、パウエル、トマジとトロンボーン吹きなら一曲吹くのも大変な曲を中心にしたプログラム構成で、集中力と言うよりスタミナを心配していたんだけど、若い力って言うのか彼女の本来持っている力なのか、最後まで存分に吹き切ったリサイタルでした。

ところでこのところ学生たちも大変忙しい中頑張っていて、先日はアメリカのITA(国際トロンボーン協会)のフェスティバルで開かれたトロンボーンカルテットのコンペティションで同じく3年の福田えりみさんが所属するトロンボーンカルテットカプリッチオが見事優勝したりとか、あとは8月26日に開かれるトロンボーン科定期に向けて日々練習に追われているようです。そう言えば東京音楽コンクール予選ももうすぐ。前期試験もあるし、吹奏楽の学内コンサートも、、、こうして並べると本当に忙しいな。まああれこれ結果を焦らずじっくりと腰を据えて頑張って欲しいなと思います。

話は戻って福澤さんのリサイタルで僕も加わって演奏したのは高嶋圭子さん作曲の3楽章からなる「春の呼ぶ声を聞く」。もともとは福島県いわき市出身の篠崎卓美さんと黒金寛行さんの二人のバストロンボーン奏者とピアノの城 綾乃さんが初演、東日本大震災からの復興を願って演奏され、今ではデュエットの曲として当初のバストロンボーンデュエットからテナートロンボーンデュエット用にも改編され定番レパートリーになって来た大変心に染みる名曲。

合わせを始めた頃は何せ3年生なのでどうかなという印象で、音も存在感が希薄だし、音程のことばかり気になっていた。しかし練習を重ね最後は存在感たっぷりのサウンドで、先生相手だからと一歩も引く事なく吹き切ったのは本当に嬉しかったし、その調子でこれからももっとスキルを上げていって欲しいなと思います。



デュエット3曲めのサブタイトルにもなっている三春滝桜(樹齢1000年を超えると言われる巨木)から枝分けした若い枝垂桜が学校の裏手、寛永寺境内にあるみたいで(確認出来たらまた何か書きます)、毎年成長を楽しみにしながら花見をしたいと思います。三春町にも是非行ってみたいな。


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posted by 古賀慎治 at 19:02| Comment(0) | TrackBack(0) | Teacher's eye | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月27日

依存する気持ち


時々気になったことや思うことを生徒向けの体裁で記事にしていこうかなと思うカテゴリ「Teacher's eye」です。今回も最近気になることから。「依存」とは前記事の「自立」とは相対する意味の言葉。

困った時や挫折した時に何かにすがりたいと言う気持ちになるのは、誰しも経験があると思う。例えばオケの本番でボレロのソロを吹く直前とかは、もうその場から逃げ出したいという衝動に駆られるけど、そんな時に何かにすがろうと思わずに自分を心底信じきれる人は本当に強い心を持った人なんだろうなと思う。出来ればそうありたいものだ。

仮にもし楽器の調子を崩した時や、仕事が上手くいかない時とか、なかなか簡単には答えが見つからないことも多いけど、身近な先輩や先生などに、何かヒントを貰いたいなと思うこともあるだろう。

アドバイスを貰いたいと思う気持ちが依存心なのかどうなのか、微妙な気もするけど学生なら当然必要なことだと思う。

日頃レッスンをしていて思うのだけど、何かに依存するのは悪い事ではないけど、トロンボーン一本で生きて行く覚悟があれば、自ずと依存する気持ちも減ってくるのかなと思っている。求めたアドバイスを盲目的に信じてしまうのは良くないし、またアドバイスされたからと言って必ず守らないといけないと言うものでもない。自分の価値基準で判断することが大事だと思う。アドバイスを聞いて今までと違った事に気付くことが一番大切だろう。

楽器を上達し一生の職業にするのは本当に大変なことで、何か不調になった時の、自分で自分を直す力、修正修復する力を持たないとダメなんだなと思う。その辺の蓄積が今の僕の仕事に活きているのは間違いない。

生徒の成長過程で教師のかけるひと言はとても大事なのは理解しているけど、妄信的に先生の言われた通りにやりますと言うのも困ったもの。大切なことは先生の言葉の奥にある考え方とか、もっと普遍的な事柄を受け止めるセンサーや回路が自分にあるかどうかでしょう。アドバイスは、僕からの言葉に限らず一度受け止めたら即答せず一度ならず二度三度と考えて欲しい。


依存心について書こうと思ったのに少々脱線気味か。スマホや携帯を自宅に忘れたまま仕事に出た日のことを思い出すと、ITに支配され過ぎているな・・・と思いつつiPhoneでこの記事を書いて投稿していると言うね  ^^;





posted by 古賀慎治 at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | Teacher's eye | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする