nombirato!: Teacher's eye

2016年04月18日

自立した演奏

土曜日に奏楽堂で開かれた同声会新人演奏会2016に行きました。同声会と言うのは東京藝大音楽学部の卒業生で構成される団体で、毎年新卒者の中から優秀な演奏家のお披露目のための演奏会を開いていただいてます。

今年の金管はトランペットの高森さんとトロンボーンの井さんが出演。二人とも改めておめでとう。

ご存知かもしれないけど、井さんは昨年の管打コンクール入選、そしてこの4月から九州交響楽団の首席奏者に合格して採用された期待のトップランナーです。

井さんの学年は僕の赴任と同じ年の入学で、初の4年間門下だった学年。先生としても4年間の成果を問われていたと言えるんだけど、まあ本人の努力と意識の問題なので、僕が何か強力に力を発揮した訳ではありません。それはくれぐれも誤解の無いようにお願いします。

井さんの演奏した曲は、ベルト・アッペルモント作曲の「カラーズ」。今回は一度もレッスンしてませんし、過去に見たこともありません。その晴れやかな演奏を聴いていて、ある事に気がつきました。歌い回しなどは彼女自身のもので僕に似ているとか全く感じなかったんだけど、スライドのポジション取りが僕の演奏とほとんど一緒。イヤ、驚きましたね。

トロンボーンは基本的に7つのポジションを駆使して全部の音を鳴らすので同じ音でも複数のポジションの選択肢がある場合が多いです。なるべく短い管長で鳴らした方がハッキリした音で外れにくいとか、早いフレーズやレガートなどは流れを重視した遠目のポジションを選んだり、それなりにポジション取りを見ているとそのプレーヤーの考えていること(何も考えていないことも含めて)手に取るように分かります。

僕のポジション取りに似てしまって大丈夫なのか?という気もしますが、プロとしての意識を感じる演奏でした。ちゃんと自立心があって先生としてはもう何も言うことが無い演奏でした。これからあとに続く後輩たちも彼女のように音楽的にも自立した演奏を目指して欲しいと願ってます。





posted by 古賀慎治 at 19:15| Comment(0) | TrackBack(0) | Teacher's eye | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月15日

最近のレッスンからの雑感など


一か月更新してませんでしたね。今回は最近のレッスンから記録しておきたい出来事や感じた事などを書き残しておきたいと思います。


高校の吹奏楽部でコンクール向けのレッスンにて。今年はブルックナーの8番終楽章(と書けばどこだか分かる人はわかると思います^^)というおよそ高校生の吹奏楽では無理ではないかと危惧されたチャレンジングな選曲で例年になく責任が重かった。それはブルックナーのシンフォニーでのトロンボーンの重要性がことさら高いから。

トロンボーンセクションは今までになくバンドの中心になることが多く、僕としてはレッスンもかなり頑張ったし、生徒たちも本当によくついてきてくれた。結果は銀賞だったけど生徒達は良い演奏が出来た実感があったらしく、後日会ってみると比較的爽快な表情だった。朝日新聞のダイジェスト動画も見たけど、細かな事はもちろん分からないけど、やりきった演奏だというのは伝わってきた。

結果は結果、受け入れるしかないけど、さっぱりした感じの学生たちを見て、良いものが出来たんだなと安心した。


次は副科での受験を目指す女の子のレッスンにて。副科なのでペースは遅いけど、とてもよく練習してあるのが分かる。読譜力やソルフェージュ力はむしろ専攻生よりもあるので、ちょっとしたヒントがハマると大きく変わる可能性があると思う。

レミントンのリップスラーを吹いてもらったところ、5度と4度の音程が悪く、また音質も芯が感じられず雑なので、吹いている自分の音を良く聞いて5度と4度のハーモニーをイメージするようにアドヴァイスしてみた。ピアノなどと違って金管楽器は指やポジション、吹く倍音が合っていればOKという訳ではなく、その先に出した音をよく聞いて響きを感じる事が必要。

よく聞いてと言ってから出て来た音は去年の奇しくも11月ごろ発見したサウンド激変の記事ぐらいインパクトのある変化を見せてくれた。サウンドに明確な芯が出来て、響きが明るくなった。去年の呪文と今年の彼女の変化で共通するのは、サウンドが明るくなり芯が明確になること。


最後に藝大でのレッスンから。去年はサウンド激変の呪文(笑)に、自分自身がある種翻弄された感もあったんだけど、今年はわりと冷静に学生に相対しています^^;

金属アレルギーの疑いのある学生に、病院で詳細なアレルギー検査を受けてもらい、そしてマウスピースにプラチナメッキをかけてもらい様子を見ていました。事の発端はトロンボーン科定期や5月のオラフ・オットさんの演奏会でトスカを演奏した時、本番直前に決まって唇がひどく荒れたり腫れて痛みが起こったりしたこと。

頑張り屋さんなので本人はあまり気にせず練習ペースを上げていった結果なんだけど、おそらく受験生の頃から、アレルギーの症状はあったのではないかと思われる。すぐ力む癖があり、音に芯がない状態のことが多く、これまでサウンドについては悩みが多かった。

ついこの前のレッスンで、サウンドが大幅に良い方向に変わっていて一体どうしたのか?とあれこれ探ってみたところ、金属アレルギーの症状が減り、唇の状態が好転し、思ったような発音が出来るようになってきたので、結果として力みが減ったというふうに推測できた。

金属アレルギー対策でマウスピースにプラチナメッキをかけて対策してもらったのはこれで門下二人目だけど、二人とも効果あり。もちろんメッキが万能ではないけど、アレルギーの原因をきちんと調べて対策すれば効果があるというお話でした。


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トロンボーン協会の会報にウィリーズの中込さんのコラムが連載されていて、「その3」の回、良い音に関しての考察が書かれていたんだけど、僕はそのコラムを読んでかなりの衝撃を受けました。彼の書いた内容は、多分日本で最も多くのプロのサウンドに詳細に接して来た人間の証言で、良い音とはこういう事と言うのが実に明快に書かれてました。僕も全く同感でした。頭の中で漠然としていた、経験による蓄積やら考えが一気に整理整頓された思いで、僕にとっては忘れられないコラムとなりました。学生諸君にも是非読んで欲しいと思います。

トロンボーン協会に入会すればバックナンバーを読む事ができるのかなぁ、、、(確認は出来てません)


posted by 古賀慎治 at 18:38| Comment(2) | TrackBack(0) | Teacher's eye | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月07日

オケスタ週間


今週は火曜と水曜に藝大の学生たちを集めて模擬オーディションを開催。

既報の通りオーディションシーズンに突入したので、どげんかせんといかん(宮崎弁)=どがんかせんばいかん(佐賀弁)ということで、先生間で相談して、2日続けて午前中に一次オーディション、午後二次オーディションということで、2日同じプログラムで実施してみて学生達がどう変わるか、何かを学び取って欲しいという思いで、模擬オーディションを行った。

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実際のオーケストラのオーディションのやり方に倣って、ピアノ伴奏でDavidのConcertinoを演奏してそのあとオーケストラスタディを数曲。今回の募集はテナーの上吹きなのでアルトトロンボーン課題もあり。午前中終了後採点して上位3名が午後の二次予選に進み、二次ではオーケストラスタディを沢山吹いてもらって、一人合格者を決めるという流れ。

結果的に二日とも同じ学生が合格。二次に進んだのは二人が共通であと一人は別々、二日間で計4名が二次に進む経験をした。

自分の演奏に容赦ない点数が付いて公表されて、正直ショックを受けた学生もいると思う。でも就職試験は厳しいものだし、第一コンクールや試験のように公平性はあまり考慮されないと思っていて間違いない。厳しいからひるむのではなく、そんな所でこそ謙虚に自分を表現して欲しい。

もちろんこの結果が実戦でそのまま反映するわけではないので、まだまだ参加した全員にチャンスがある状況は変わらないと思う。実戦を通じて初めて分かることも多いし、また先生の側、審査員の側からのアドバイスも出来たと思うし、とにかく学生達みんなの実力もだけど、意識を高めてもらいたいという先生たちの思いは伝わったのだろうか。

二日目はオーディションの終了後僕たちと学生達でオケスタ大会。先生と一緒にオーケストラの曲を演奏して、さらに理解は深まった?と信じたい。僕はその後日藝のトロンボーンアンサンブル定期の練習へ。これについてはまた後日。

昨日は藝大フィルハーモニアのホルン奏者オーディションの二次審査会。4名の方々が進まれて1名が合格された。なにしろ多くの現役プレーヤー審査員を前にして一人で演奏するって本当に大変。これから立ち向かう学生達には実力を遺憾なく発揮してほしいと願うばかり。


posted by 古賀慎治 at 13:31| Comment(0) | TrackBack(0) | Teacher's eye | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月24日

一枚のアンケート


先日のトロンボーン科定期でお客様に書いていただいたアンケートを読ませてもらった。

近年の中では、かなり手応えのある仕上がりだったので、読ませていただくのが楽しみだった。しかし、こと運営に関して入場の際に手際が悪く、多くの方にご迷惑をお掛けしたり色々反省点も多かったので、アンケートで頂けた点も含めて次回への改善を今後話し合うつもり。

演奏については、ほぼ8割方良かったという評価をいただけたようでホッとしていたところ、一枚のアンケートに絶句した。

無記名なので大体の概要を書くと、「内容が低レベルで評価に値しない」「指導者がアンサンブルの何たるかわかっていない」「個々の技量以前の問題、指導者が悪い」とまあ、散々な評価。

一般的には、実演なのでまずは舞台上の演奏者に対してのご意見などをいただくことが多いと思うんだけど、ここまで断定的に、しかもかなり強い気持ちで書かれたことのわかる文字で、指導者として批判されたのは初めての経験。正直かなり凹んだ。しかしながらなぜ学生たちの演奏を聴いただけで、指導者が悪いとそこまで断言されるのか、正直よく分からないのですよ。


その後も文章を何回か読み返したんだけど、単なる苦情と言う感じはしなくて、何か音楽に信条を持った方の批判という印象を持てたのは事実。それだけになぜ指導者が、、、、、というお話をできれば伺ってみたかった。たった一枚のアンケートなので、気分的には無視すれば良いのかもしれないんだけど、やっぱりかなり気になっております。

今は、ちょっと出来が良かった位で少々舞い上がっていたことに対する警鐘と受け止めてます。




posted by 古賀慎治 at 12:57| Comment(0) | TrackBack(0) | Teacher's eye | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月20日

25th 藝大トロンボーン定期備忘録


image.jpg一昨日は、いつもの川口リリア音楽ホールで藝大トロンボーン定期の第25回が開かれました。お陰さまで目測8割以上の客席が埋まるほどのお客様に来ていただけて本当にありがとうございました。

演奏会終わって、僕が気がついたことや、いただいた貴重なお話など反省点のメモ書き、備忘録を記録しておこうと思います。


演奏面に関しては、一週間前の通し練習からの成長は本当に素晴らしいものがあって、僕の予想のはるか上を行く仕上がりだった。10月に開始した合わせ練習で積み上げたものが十分にあったので、最後の一週間で学生みんなが持った危機感や自立心といったものが、本番の集中力につながったと思う。

時期的にインフルエンザや体調面でのことがとても心配されたんだけど、幸い今回は体調を崩した学生もいなくて、これも良かった点。

過去の演奏会当日は、みな睡眠不足で披露困ぱいと言う状況で本番に臨んでいたようだ。センター試験で大学が入校禁止だったという怪我の功名ではあったようだけど、今回は本番前日をオフ日に出来たようで、コンディション面では本当に効果てきめん、非常に良かったと思う。

4人の方々に編曲作品を提供していただいたが、どれも素晴らしい作品で、学生たちは挑戦のしがいがあったと思う。特に大作だった「トスカ」の編曲者、作曲家でトロンボーン科の先輩でもある井元透馬さんのアレンジは秀逸、ここでどうこういえる次元の作品ではなく、ただただ音楽的で素晴らしいのひと言。感動的なひとときだった。

今回は女子率が半分を超えた初の定期。全体としてのサウンドはどうなるかと興味を持って見ていたんだけど、結局最後の長いアンコールではじけた後はいつもの通り(笑)。終演してもなおまだまだいけますと言う無限?なスタミナを感じさせてくれたが、彼らの真の姿はアンコールなのか?(笑)


個人的には、少々調子を落としていた学生が、思いっきり良く吹けていて、調子を取り戻していたのも嬉しかった。まず大事なのは良く鳴らすこと。抜けの良い良く響くサウンド第一だと再確認。



翻って運営面ではお客様にご迷惑をおかけしてしまう場面も多々あり、反省多数。

開場してから開演までの間に受付に並んだ皆さんをさばききれず、開演が10〜15分程度遅くなってしまった。行列の誘導とか受付に配置する人数とか、あとチケットの受け渡しの方法とか、考えなければいけない点多数。早くから並んでくださったのに入場が遅れてしまった皆さん本当にごめんなさい。

演奏後に、編曲者の方を紹介することが出来ず、ステージマナーとしてはちょっと残念だった。

石川先生に以前から指摘されていたけど、みんな笑顔で登場しようというのが徹底できず。まあ緊張感の方が勝ってしまったようで。


1年半ごとの開催なので、準備の時間は割とあるんだけど、こと、運営面に関しての下の学年への申し送り、引き継ぎというのがなかなか難しく、上手くいっていない原因の一つと思う。毎年1月に開催と決まっていれば、何月頃に何を準備して、この時期までにはこれを仕上げて、と先輩から後輩への申し送りは確実で楽だと思う。ある意味毎回初心者が運営に当たっているようなものか。



最後にいろいろと考えること。

彼らの合わせ練習は、僕が想像していたよりも相当多かったようだ。どうしても早朝と夜間が大編成の合わせの時間になってしまうので、体調やコンディションを崩してしまう学生も多かった。プロとしての自覚、自立を目指して欲しいので、これからは合わせ練習は減らし、まず個人で責任をもってしっかりと準備し、最小限の時間で集中して仕上げる方向へ向かわないといけないと思う。もちろんアンサンブルを熟成させるための回数も大事。要はバランスをどう考えるか。


結局最も大事なことは本番のステージで最高のパフォーマンスを発揮すること、ただ一点。体のコンディションも気持ちも演奏も本番でこそ最高になるように考えて欲しい。


代々このトロンボーンアンサンブルの定期は学生たちの主導で開催されてきており、僕もこの伝統は基本的に続けたいと思っている。いち大学の専攻生による演奏会なので、先生が指揮したり一緒に演奏したり、プログラムについても先生の意向が強く表れても良いとは思う。今後そういう場面も出てくるかもしれない。

でも、僕はこれから学生たちがプロとして世に出て行くための経験の場という位置づけも大事だと思うので、彼らとは適度な距離を保ちながら、指導監督はきちんとやりつつ、後は学生たちに大いに自主性と実力を発揮してもらいたいと願っています。


まあしかし、学生たちは本当によくやったと褒めてあげたいコンサートでした。お疲れさま!!

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posted by 古賀慎治 at 01:39| Comment(0) | TrackBack(0) | Teacher's eye | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする